新事実!教材研究よりも時間を要する?教員の仕事【校務分掌について】

高校教員の仕事
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教員の仕事でウェイトを占めるものに、「校務分掌」というものが存在します。

進路指導、生徒指導、と聞けばイメージが湧くかもしれませんね。

校務分掌は、学校組織の運営をみんなで分担する仕事です。

状況によっては教員の本務”教材研究”よりも時間を費やすこともあり、仕事の中でもかなりのウェイトを占めます。

この記事では、校務分掌の具体的な仕事内容や進め方について紹介します。

仕事の具体的イメージをつかむのに役立ててください。

校務分掌 構成

職員会議室

学校によって組織体制は異なりますが、一般的な構成は次のようになります。

分掌関連する業務内容
教務部教育課程、時間割、学籍、指導要録、通知表、教材  など
総務部校内行事(式関係・芸術鑑賞・防災訓練など)、広報、教育実習、修学旅行 など
生徒指導部生徒会、生活指導、部活動、文化祭、体育祭、地域連携 など
進路指導部進学就職支援、面接・小論文・履歴書指導、模試運営、進路分析 など
健康保健部校内環境美化、スクールカウンセラー、健康保健指導、特別支援 など
事務部施設管理、備品管理、職員給与・旅費、会計 等 ※事務部は教員は携わらないです
校務分掌 業務分担

全職員がいずれかのチームに配属されて、粛々と担当業務を進めます!

それぞれの仕事内容

会議室の机と椅子

教務

教室の黒板

– 学籍関係を徹底管理する・理系科目の先生多め –

主な仕事内容

成績処理、確認、管理
成績処理(システムへの入力・確認方法・期限日など)について教員へ周知する。提出された成績の内容に漏れや誤りがないか確認する。必要に応じて、成績会議(単位修得の認定や評定についての説明・確認をする)を開く。
その他、指導要録の確認・管理、出欠時間数確認、単位修得(学籍)関連の仕事。

時間割作成 
個人的に「超難解パズル」と命名していた業務です。
時間割を組むにあたって制約はたくさん。教育課程で必要な授業時間数・単位数をクリアすることに加え、体育や家庭科など実習系科目を入れる時限の配慮や、非常勤講師の勤務可能日時を固定するなど、複雑さを極めます。学期ごとに開講される科目があったり、行事の関係で授業数の調整が必要になることもあり、必要に応じて作成します。

定期考査関係
考査時期が近づいたら、実施科目の集約をとり考査時間割を作成する。考査期間中は、問題が期日内に作成準備されているか、必要部数が所定の位置に保管されているかなど確認管理する。試験当日は、問題・解答用紙の受け渡し、枚数チェックを随時行い、ミスがないよう徹底する。

教科書選定、注文
次年度に使用する教科書・副教材の選定(理由を含め)を各教科に依頼。その内容を教育委員会に報告する。使用教材が確定したら、次年度の各科目の受講者数を反映させて、必要数を書店に注文する。注文前には生徒へ自身の選択科目と注文教材に誤りがないか確認を実施し、教材代金の案内をする。教科書販売日に向けて、書店と連携。生徒に案内。

・その他
補充指導、教員向け研修(教育課程や評価基準の変更についてなど)などの業務がある。

* エクセルを駆使する仕事が多く、理系科目の教員が配置されていることが多いです。細かい&成績という神経を使う業務を担う分掌!

総務

職員会議

– 別名「何でも屋」・フットワークの軽さが求められる –

主な仕事内容

式典行事(着任式・入学式・卒業式・離退任式など)
要項作成、会場設営、全体指揮・監督。
特に入学式、卒業式はタイムテーブルから座席表、受付での業務など中身の多い式なので要項もそれなりの厚さになる。
前日から式直前まで、抜かりないよう確認作業を何度も行う。

広報物作成(学校要覧・学校パンフレット・学校HP・Instagram・広報誌・同窓会ポスターなど)
〔学校要覧〕組織編成や教育計画、経営計画など、学校組織の概要を扱う文書。形式は例年ほとんど変わらないが、公式文書になるので記載誤りなどないよう細かくチェックする。
〔学校パンフレット〕学校生活の1日の流れや年間行事、生徒の声、進路実績などを掲載した広報用パンフレット(主に中学生に配付される)。
〔HP・Instagram〕実施された学校行事の内容や写真をアップしたり、入試関係の情報や臨時休校の連絡などを掲載する。仕上がりは教員のHP編集能力にかかっているので、学校によってクオリティが変わる。

外部連携を必要とする行事の計画、実施、指揮。
〔オープンスクール〕中学校への案内、参加者の集約(中学生・保護者・中学校教員)、体験授業、部活動見学の希望集約、配付物作成。
また実施側として教員・生徒の動静表作成、会場設営、当日の全体指揮。
〔修学旅行〕旅行会社の入札、その後旅行会社担当者と随時連携、分掌・学年会で情報共有、意見集約、しおり作成など。
〔防災訓練〕消防署と連携、計画実施要項作成、全体指揮。
〔芸術鑑賞〕実施内容、招聘する人(会社)の選定、支払い手続き(事務に連携)、会場設営、当日の対応。
〔国際交流(留学など)〕生徒へ案内、現地受け入れ先(学校やホームステイ先)との連携、日程調整、旅行会社の選定・連携、参加者保護者説明会実施、引率。

・卒業アルバム作成
 アルバム作成業者の入札、契約先とのやりとり(撮影に来てもらう行事の案内など)。

・教育実習生対応
受け入れ実習生の集約、事前説明会の実施、実習生の指導教諭決め・依頼、教育委員会や実習生通学の大学へ提出する報告書など関係書類を作成し提出する。

・奨学金
生徒・保護者へ案内、申し込みの集約・説明会実施、登録手続き。

* 突発的に生じる業務や新しい取組みをするときは、「とりあえず総務に投げよ!」の合言葉で振られる率高め。別名「何でも屋」。
新規事業に加え、”動く”系の仕事も多く、言葉通りフットワークの軽さが求められる分掌。

生徒指導

体育館のバスケットゴール

– 生徒理解・対話のプロ –

主な仕事内容

生活、保護者対応
生徒対応案件(事件事故やトラブル、問題行動など)が発生したとき、事実確認や生徒の対応、今後の方向性について検討するなど解決に向けて動く。対応においては本人の思いを聞き取り、本人に改めるべきところがあれば(一方的に伝えるのではなく)共に考える。事案によっては、保護者を学校に呼んだり、警察連携が必要になることも。突発的に発生かつ長引く案件も多く、複数件重なった時などは時間外労働は必死。

学校行事(文化祭、体育祭、新入生向け部活動紹介など)
企画運営、生徒の指示、全体指揮。

生徒会運営
生徒会役員の活動(行事での挨拶、生徒会誌の発行、校内規則の見直しなど)を支援。その他、生徒会費の予算管理、収支、決算報告に関連した業務。

部活動関係
規定や部費管理、必要に応じて顧問会議の開催など。

* 難しい年代の生徒と腹を割って向きあう場面の多い生徒指導部。生徒が本音でぶつかってこられるよう、安心感を与えられ、懐に入り込める人物が求められる。ゆえに生徒理解・対話のプロ。

進路指導

受験勉強をする生徒

– 就職・進学合格率をデータとともに経験知識から算出するエキスパート –

主な仕事内容

進路診断会議
受験期直前に、生徒一人ひとりの進学先を成績を基に診断、判定する会議。生徒全員の偏差値データなどの資料作成や会議運営、進行をする。

就職指導
就職に向けて生徒の支援、指導を行う。就職試験の取り組み方や心構え、注意事項等を伝える場を設けたり、企業見学の手続きや、小論文・面接・履歴書指導等を行う。外部講師を招いての説明会、マナー指導を行うこともあるので、その計画、実施をする。

補習計画
長期休暇中に実施する補習計画を立てる。時間割や教室割、補習担当者などを決めて、生徒へ案内、参加者を集約する(参加生徒は全員必須であったり、希望者のみなど学校により異なる)。

模試
土日に行われる模試の計画とその実施。監督割や実施要項の作成、模試運営会社への申込、会場準備、実施後の答案発送、監督者への報酬支払い、未受験者の対応(当日受けられなかった生徒の事前事後受験の対応)など。

模試分析
模試結果のデータを分析して、学年や教科に見られる傾向や偏差値向上に向けての対策事項を洗い出し、会議等で教員に周知する。

就職支援員(JST)との連携
就職指導の依頼や生徒面談の日程調整、担任と情報共有する場を設ける。(JSTが常駐している学校もあれば週1回勤務してもらう学校などがある)

・進路実績の報告、合格体験記作成、卒業生講話(在校生に向けた講話)の計画、実施。

・その他
各学校や会社の、入試や広報、採用担当が来校したとき、その対応をする。その他、学校資料・求人票など郵送物の整理など。

* 大学入試に力を入れる進学校では、生徒の解答ぐせや得意/不得意問題などを網羅する教員が多数いる。大学の入試問題傾向も熟知しているので、それらを掛け合わせて堅い合格率を叩き出す。エキスパート軍団。

健康保健

日の差し込む教室

– 生徒の心身の健康を守る –

校内清掃美化、衛生管理 
掃除場所の担当表の作成、掃除道具の点検・交換、ワックスがけの計画実施、校内美化点検など。

生徒の健康管理
健康診断の計画実施(養護教諭主体)、毎日の健康観察

スクールカウンセラー
スクールカウンセラーとのカウンセリング(生徒・保護者対象)の計画実施。実施後カウンセリング内容を担任や学年主任と共有する場を設ける。その他、スクールカウンセラーを講師とした、教員向け研修、生徒向け講演会などの実施。

安全点検
校内や学校敷地内に危険箇所等ないかの点検を行う。分担表を作成し、期限を設けて教員に点検依頼をする。

* 生徒の悩み、相談を受け止めてくれる校内の安全地帯となる分掌。生徒・教員ともの心身の健康を守ってくれます。

仕事の進め方

職員会議

分掌ごとの仕事は、年度初めの分掌会議で、数や負担量に偏りが出ないよう割り振って、担当者を決めます。

担当者は任された業務を、時期に合わせて計画、検討、実施します。

進め方はさまざまだけど、以下のプロセスが一般的。

  1. 起案・要項作成
  2. 全体周知
  3. 実行
  4. 振り返り
起案・要項作成 

起案(立案・草案とも言う)とは、実行する事柄の仕様書。

A4一枚に日時、目的、場所、対象者など記載。確認者(主任・管理職など)の押印欄がある。

要項とは、実施にあたって必要な情報すべてを記載した計画書。

タイムテーブルや、担当者、各担当業務の内容・準備物、会場設営図などが細かく記載される。要項を見れば、滞りなく遂行できるように仕上げる。ペーパー1枚ものから冊子ものまで、内容により形態は異なる。

学校外に連携する箇所がある場合には、そのやりとりも計画的に進めておく。たとえば防災訓練では、消防署と訓練実施日、実施内容の調整、必要書類などを確認しておく。

要項ができたら、内容チェック。

まずは分掌会議でメンバーみんなで目を通す。続いて管理職が確認。意見が出れば練り直し、訂正修正があれば直す。

全体周知

決裁(管理職の「これで進めていいよ」という許可)が下りたら全体周知。

職員会議等で共有し、疑問点や気づき、意見などがないか、先生みんなでしっかり確認。

準備・実行

実施に向けて準備していきます。

配付資料や掲示物の作成、必要物品の購入準備。生徒も参加する場合には委員会などを開いて指示をします。

実施時は滞りなく進むよう全体指揮にあたる。トラブルが生じた場合には、計画の変更や、管理職に意見を仰ぐなど臨機応変に対応する。

振り返り

終了後は気づきや改善点を洗い出し、次回(次年度)に活かすデータを残します。必要に応じて職員や生徒にアンケートを取ることも。


上の流れにはまらない業務もあるので、それぞれ内容に適した進め方を取るよ。

どの業務においても共通して言える重要なことは、「計画的に進める」こと。急な依頼や変更は大勢に迷惑をかけるので、見通しを持って進めるべし!

この仕事で得られるスキル・やりがい

会議室

校務分掌の仕事は学校全体に影響するものなので、緊張感や負担を感じる側面があります。

一方、自分の仕事が組織を回すことになるので責任感が生まれ、完了できた時にはやりがいを感じられます。

企業では組織の一部の業務にしか携われないこともあるけど、学校は比較的規模が小さく、経験を積むごとに任される業務の幅が広がっていきます。

なので全体に自分の声を反映させ、変化を起こすことも可能。

さまざまな分掌に携わる中で組織体制の理解が進み、全体を俯瞰して捉える力が付き、マネジメント力も養えます。

意欲のある人にとっては、貪欲に成長できる職場環境だと感じました。

また、分掌業務は生徒対応や授業準備など他の業務の傍ら進めることになるので、効率的に仕事を進める術を必然的に学ぶようになります。

時間管理、PCスキルなどぐんぐん身に付きます(身につけざるを得ない!)。

関係各所と連携をとる場面では根回しテクも習得していきます。

経験を積むにつれ、周りに目が行き、こなせる仕事も増えてくるので自信がつきます。

まとめ

校務分掌の仕事を通して得たスキルは、他業界で活躍するのに大いに役立ったと私は実感しています。

教員になりたての頃は、こんな仕事もあるの?と想定外なことに戸惑うこともありました。

本務の教材研究に、十分に手が回らないという実態を生んでいるのも事実ですが、これら業務の経験は、財産となっています。

この記事の内容が、校務分掌の仕事イメージをつかむことに役立てば幸いです。

コメント

  1. […] 校務分掌についてはこちらの記事も参考に🔗「【分掌】なくして語れない!教員の仕事」 […]

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