学校教員の長時間労働が問題視され、ブラック職業の一つとして扱われるようになって久しいです。
教員のなり手も年々減少傾向。
教職をそのようなハードな仕事にさせているものは何なのか。
現場で感じた教職が抱える難しさについて紹介します。
課題を整理し、負担になる原因に目を向けながら仕事をすすめていくことで、負担を軽減するコツが見えてくるかもしれません。
対(たい)人(ひと)の仕事であること
考え方や価値観は人ぞれぞれ
教員は生徒に、大切にしてほしい行いや生き方について、使命感を持ち伝えるもの。
でも受け手が同じ考え方を持ち、教員の思いや意図を理解するとは限りません。
それぞれに異なるバックグラウンドがあり価値観がある。
そのことを理解するのは意外にも大変なんです。
「そんなこと、これまでの人生でも経験してきたことだよ。」と思うかもしれませんが、教員という立場にいるとまた異なる要素が生まれるものです。
自分の身近にいる人たちは、自分と似た価値観や考え方を持ち、経験値や年齢も近いことが多いです。
でも相手が自分よりも人生経験浅く繊細であったり、自分とは異なる価値観のなかで育ってきていたら?
その世界を理解することはもちろん、想像することさえ難しいかもしれません。
自分の話す内容を、生徒たちはまったく異なるように解釈しているのかも、と意識を向けることが必要です。
特に難しいのは、生徒指導事案において。
他に迷惑をかける行為や社会で受け入れられない振る舞いを生徒がした場合には、その規範の必要性を伝えなくてはなりません。
そうした時に対応や内容を誤ると、生徒(保護者)が「自分(子ども)のことを理解してくれない教員(あるいは学校)だ」と判断してしまうことにもつながります。
そんなつもりで言ったわけではないよ、と誤解が生まれるケースも多く見てきました。
相手に寄り添い、関わり方を模索しながら対応することは言葉で示すほど簡単ではないんですよね。
そうならないため、さまざまな生徒と対話を重ね、視野を広げることが必要だと感じました。
教員職は対人関係
アドラー曰く「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」。教職はそんな対人関係で構成されています。
さまざまな考え方を持つ生徒たちと、内面をさらけ出して対話することを、この仕事は要求します。
生徒や保護者全員と常に良好な関係を築くのは至難の業。
ソリが合う人もいれば合わない人もいる。かといって、関わりを断つわけにはいきませんね。そのような時、難しさや負担を感じることは少なくないです。
また教員の発言が、意図せず生徒に威圧感や不快感を与えていたり、反対に生徒の言動に悩まされることもあります。
誤解やトラブルをゼロにすることはできなくても、視野を広くもって相手と関わり、摩擦の生じにくい人間関係を構築する努力が必要となります。
人と向き合う時に”答え”はない
何が生徒のためになるのか、このやり方で正しいのか、ということを教員は常に考えていると思います。
決断の連続で日々取り組むも、あれでよかったのかと悩むことがつきません。
答えはどこにもないですからね。
確固とした信念を貫ける教員もいれば、真面目がゆえに気が休まらず思い詰めてしまう教員もいます。
答えがないゆえ、考え続けることを要求する仕事。この側面も教職をハードにさせているな、と感じた要素です。
仕事量の多さ、業務内容の多様さ
教材研究・授業準備
授業作りにおいてゴールはないです。試行錯誤の毎日で、ひらめきと失敗の連続。
生徒たちは常に変わるので、目の前の彼らに”ハマる”学びを模索し続けなくてはなりません。
時代の流れや教育方針の変化にも対応させ、アイディアを50分の中で形にし、フィードバック・修正を繰り返す。
授業科目は複数あり、生徒の人数も多く、どんどん生産していく必要がある。
エンドレスな実験の如く研究を積み重ねることが要求されます。
校務分掌業務
学校運営に携わる業務で、公的文書の作成や学績管理、外部とのやりとりなど、細かい確認や連携を必要とします。
時期によっては、本務の教材研究よりも、時間を費やすことも多かった仕事の一つです。
組織全体に影響する仕事なので、スケジュール管理は然り、周知徹底、漏れのないよう遂行します。
授業や生徒対応の合間を縫って処理していくけど、日中は何かと中断が入るもの。
なので生徒が帰宅した後や休日に出勤して、腰を据えて取り掛かることが多かったです。
生徒対応・学級運営・部活動指導
生徒からの悩み相談や指導案件は突発的に生じます。
対応にはしっかり時間を確保する必要があり、日々の業務の中で進めるとなると、負担は大きいです。
生徒指導案件では保護者とのやりとりを要することもあり、働いている親御さんとのやりとりは、勤務時間終了後となることがほとんどですね。
長引く案件もあり、連日遅くまで対応することもあります。話す内容が良いことならいいですが、そういうわけではないことが多いですからね。配慮しながらの対応は精神的に気を使います。
部活動指導も、学校や時期によって重くのしかかることが多いです。
基本的に勤務時間外の業務であること、週末や休業中に遠征がありその準備を行うなど、時間的負担が大きいです。
完成しない仕事であること
どんな仕事もゴールはないのだけど、教職は特に”際限なくやってしまう”仕事の一つだと思います。
それはやはり”人”を相手にする仕事だから。
生徒とのやりとりも、授業作りも、考査の作成でも、この進め方でよいのか、提示方はふさわしいのか、この問いは思考力を測れる問題になっているのだろうか‥と、生徒の顔を思い浮かべながら教育の本質に思いを巡らせます。
もっと手をかければ、よい結果が得られたのではないかと思い詰めることもあると思います。
でも、やりすぎは禁物です。教員が体調を崩してしまったら本末転倒です。
自分が納得できる基準をもって、これでよいのだという判断を下す勇気も大切だと感じました。
まとめ
以上3点、
- 対(たい)、人(ひと)の仕事であること
- 仕事量の多さ、業務内容の多様さ
- 完成しない仕事であること
が、教育現場を経験して、教職の負担を減らしにくい要素だと感じました。
やった分だけ成果が出るものでもないし、良い結果につながるわけでもない。人相手の仕事だから。
ニュートラルな視点で物事を捉えられるよう視野の拡大に努め、ブレない信念や哲学を持って取り組むことが大切です。
教育現場は人間力を高めるという壮大なテーマのもと、教員自身も成長できる職場だと私は考えています。
難しさがあるゆえ、相手の心が動いたり見えない手応えを感じた時には、自身の存在価値を実感する瞬間が得られます。
そこに病みつきになる教員も少なくないはず。
誰も答えを持たない仕事であるからこそ、達成感はひとしおな職業です。
この記事を読んで、負担が多い業務を理解し、それらを軽減させる仕事の進め方が見つかることにつながればと、教員ライフを充実させましょう。
以上、教育現場を経験して思う、「教員の仕事【大変なこと3選】」を紹介しました。
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