定期考査は生徒の学習成果を評価する重要なツールです。
しかし、効果的で公平な試験を作成することは容易ではありません。
- めちゃくちゃ時間がかかる
- 「問いたい力が何なのかわからない」と指摘を受ける
- 配点に手間取る
こんなお悩みをもつ方はぜひこの記事を最後まで読んでください。
私は教員を10年間していましたが、考査作成はエネルギーを要するタスクの1つだったと感じています。
教員の皆さんが効果的な定期考査を効率的に作成するステップとヒントをお伝えします。
問題作成
枠組みを作る
試験の目的と範囲を明確にする
まず、定期考査の目的と範囲を明確にしましょう。
- 目的:何を評価したいのか
- 範囲:どの範囲を対象にするのか
例えば、特定の単元の理解度を測りたいのか、全体的な知識の定着を確認したいのかを考えます。一般的には次のようになることが多いです。
- 特定の単元の理解度:学期の中間・期末考査
- 全体的な知識の定着:学年末考査
目的と範囲を決めることで、試験全体の構成が見えてきます。
学習目標・評価基準に基づく問題設定
次に、学習目標・評価基準に基づいて問題を設定します。
- 学習目標:授業で扱った主要なポイントや単元目標
- 評価基準:観点別評価の項目と割合(学校シラバス記載:生徒の成績評定に用いる割合)
妥当性・信頼性を保つ観点においても、学習指導要領や指導書、学校規定の年間シラバス・評価基準を用いてください。
これにより、生徒が学習目標に対してどの程度理解しているかを、学校の評価基準に照らし合わせて、正確に評価できます。
〈参考|評価基準の配点例〉
考査範囲が「単元A・B、教材C」で、勤務校の評価基準が「知識技能:思考判断表現:主体性=1:3:2」の場合。
※ 定期考査
考査範囲/観点別 | 知・技 1: | 思・判・表 3: | 主体性 2 | 範囲ごとの 合計点 |
単元A | 5 | 15 | 9 | 25 |
単元B | 7 | 20 | 12 | 40 |
教材C | 5 | 17 | 10 | 35 |
観点ごとの合計点 | 17 | 52 | 31 | 100点満点 |
担当教科のあなたの学校の観点別割合はどうなっていますか?
シラバスを開いて確認してみましょう。
どう問うか
多様な問題形式を取り入れる
定期考査には、複数の問題形式を取り入れることが重要です。
例えば、以下のような形式があります:
- 記述問題:生徒の考えを深く掘り下げることができる。
- 選択・穴埋め問題:幅広い範囲の知識を効率的に評価できる。
- 図表問題:視覚的理解力を評価するのに適している。
記述ばかりだと解答に時間がかり、網羅的に知識レベルを測れません。
さまざまな形式をバランスよく取り入れることで、試験のバリエーションが豊かになり、公平な評価が可能となります。
難易度のバランスを考慮する
試験の難易度は、生徒全員が挑戦できるレベルに設定することが大切です。難しすぎず、簡単すぎないバランスを意識しましょう。
例えば、基礎的な問題から応用的な問題まで段階的に配置することで、全ての生徒が何かしら解答できるようになります。
難易度調整に使う観点の例
- 知識だけで答えられるもの
- 解釈を要するもの
- 自身の意見を求めるもの
- 題材の抽象度合い
- 出題量
生徒の顔を思い浮かべながら、「平均点が60点前後」となるようバランスを整えましょう。
解答作成 見直し 考査実施後
明確な採点基準を設定する
採点基準を明確に設定し、問題ごとに配点を決めることには次の目的があります。
- 公平かつ一貫した採点が可能となる
- 生徒にもどの部分が重要であるかが明確に伝わる
特に記述問題の場合、具体的な採点基準を設けておくことで、主観的な評価を避けられます。
採点基準を作るときには、次の手順ですすめていました。
- 評価基準を満たす要素を洗い出す
- 問いに対する正当性を段階ごとに示す
- 出てくるであろう解答を予想する
- 客観性・平等性を保たせるため同僚複数名に目を通してもらう
それでも、実施してみると生徒たちからは想定外の答えは出てくるもの。採点時にそういった解答に出会ったら、教科内で相談しルーブリックに修正を施しながら採点基準を固めていました。
英検や模試など公的試験の採点基準もよく参考にしていました。
(問題ごとの配点は「学習目標・評価基準に基づく問題設定」を確認。)
試験のリハーサルと見直し
試験を作成した後は、自分で解答してみてください。
これにより、問題の難易度や時間配分の適切さを確認できます。
また、同僚にチェックしてもらうことで、問題の曖昧さや誤りを防ぐことができます。
フィードバックと振り返り
定期考査を実施した後は、生徒にフィードバックを行いましょう。
正答率や回答の傾向、解説を伝えることで、生徒が理解を深める機会になります。
また、先生自身も試験結果を振り返り、次回の定期考査に向けた改善点を見つけましょう。
活用したい外部の考査
考査作りで勉強になるのが、他の試験問題を分析することです。
- 大学の入学試験
- 共通テスト
- 模擬試験
- 検定資格試験
- 海外の試験
内容、問い方、題材などそれぞれバリエーションが豊富で、さまざまな”問い”を知ることができます。
日本教育の”当たり前”から一歩離れた視点を持つには、海外の考査事情も参考になります。
問題を入手することは難しいですが、傾向などの情報はネットでも得られます。
違う角度から着想を得られます。
バカロレアの教育理念も教育の本質を見つめ直す→試験問題を考えるのに大いに役立つでしょう。
まとめ
定期考査の作成は時間と労力がかかりますが、効果的な評価を行うためには不可欠な作業です。そして、教員にとって重要なスキルです。
見方を変えれば授業同様、学びについて考える時間であり、追求し続けられる面白みを含んだ仕事とも言えます。
適切な準備と工夫を凝らすことで、生徒の理解度を正確に評価し、次の学びに繋げることができます。
- 試験の目的と範囲を明確にする
- 学習目標・評価基準に基づいた問題設定
- 多様な問題形式を取り入れる
- 難易度のバランスを考慮する
これらのステップを踏まえて、最善の試験作成をめざしましょう。
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